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ご愛読ありがとうございました good bye
by peacetree
人間は悲しい動物


::::: 2004年5月5日 Wed :::::

イラク情勢#13
米軍イラク人虐待
数日前から拘束中のイラク人に対する虐待の報道がされているが
これに関連して思い出したのが 心理学史上最も有名な「囚人・看守実験」

アメリカ スタンフォード大学のジンバルドー(Zimbardo)が1977年に行った
実際の刑務所で起こる残虐行動を生起させる要因を解明するのが目的
実験という下でも 看守という役割を与えられた普通の人はより残酷に
囚人役の人は卑屈になっていき その行為はどんどんエスカレートして
最後には実験を中止せざるを得なくなった
現在は その危険性と倫理面の問題から実施を禁じられており
実験に協力した人との訴訟も継続中

           +++++++++++++

【実験の詳細】
目的
普通の人が特殊な肩書きや地位を与えられると 
その役割に合わせて行動してしまうことを実験により検証

方法
地下の実験室内に実際の刑務所と同じ設備を作り
被験者となる健全な大学生21人を
「看守役」11人と「囚人役」10人の2つの役割にグループ分けした
そして以下のような条件のもと “役割を演じる”実験を実施
 1.実験期間は1週間
 2.看守役と囚人役になり それぞれの立場を演じてもらう
 3.看守は実際の制服を 囚人は囚人服を着る
 4.囚人は番号で名前を呼ばれる
 5.刑務所は現実のものときわめて近い環境を作る
  ・定期的に弁護士や牧師が来訪
  ・家族との面会も制限
実験は 実際に警察に逮捕される場面から始まり 
この役割分担が1日中続けられ 実験者によってビデオカメラで観察された

結果
時間が経つに連れ 看守役の被験者はより看守らしく
囚人役の被験者はより囚人らしい行動をとるようになった
看守はより 攻撃的な行動が目立つようになり 囚人に対し侮辱的な発言が多くなっていき 自ら時間外にも実験に積極的に協力するようになった
囚人は 受動的な態度を示すようになり 次第に無気力になっていった
看守たちがいない場面でも 囚人たちは仲間同士で自分自身のことを話し合ったりといった行動はほとんどなく 会話の90%は 刑務所内の話題に終始した
活気のある看守とは対照的に 囚人たちの情緒は次第に不安定になり
しまいには心身症の兆候や発作を起こす被験者が出たため
実験は6日目に中断された


★参考

           +++++++++++++

人間は意外と役割(環境)によって 行動が規定されている
さらに その行動によって中身(アイデンティティ)も一時的ではあれ変化する

今回のアメリカ兵の残虐な行為も同じことが言えると思う
彼らは イラクに戦争のために連れてかれたアメリカ人である
アメリカには 家族も友人もいるにちがいない普通の人である
もともと残虐な人間性を持っている人間では なかったかもしれない

私は その残虐な行為を肯定しているのではない
ただ 非道な行動をした者たちを罰しても意味はない といいたいのだ
真に悪いのは彼らではない
罪深いのは「戦争」そのものである

人間は動物である
進化心理学的に考えれば 己の遺伝子を後世に遺すことが
本能に組み込まれている
すべての個体の遺伝子が後世に遺されたら 種が増えすぎるので
ある程度 淘汰されなければならない
それが「争い」である
だから 「争うこと」は本能の一部でもある
しかし 「争い」は自分の身を危険にさらすことにもなるので
できれば避けたいものである
人間には 「争うこと」と「争いを避けること」を同時に行う能力がある

この世から「争い」がなくなることはないだろう
でも努力次第で減らすことはできる
本能に振り回されない生き方をするために 理性と知性がある
それらを育てるために 教育と道徳がある
そうやって人間は文明を築いてきた

わざわざ「争い」を作ってはならない
普通の人が 「争い」の中で担う「役割」に振り回され がんじがらめになって
結果的に残虐な行動をしてしまう そういった状況を生み出してはならない

人間は悲しい動物
そんなことわかっているのに それでも「争い」は減らない
一刻も早くイラクの地に平和が訪れますように
暴力から解放されますように

☆「囚人・看守実験」の公式サイト
☆1971年の実験がそのまま映画になっている 『es』(2002 ドイツ)
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::::: what's done :::::

自閉症児のドラマ「光とともに…」を観た
的確に自閉症という障害を描写してあって なかなかよかった

・ケース記録の整理 :一部VTR確認すること
・F先生からの依頼 :最終稿 OK
by peacetree | 2004-05-06 00:48 | あしあと
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